ワインに重ね合わせる人生 カリフォルニアワインの傑作 Starr ranch Marriage

ワインに重ね合わせる人生 カリフォルニアワインの傑作 Starr ranch Marriage

2018年が皆様にとって素晴らしい1年になります様に!

さて、2018年最初となるこのブログでは、2017年に飲んだ沢山のワインの中で、最も印象に残ったワインの1つ「Starr ranch Marriage 2014」を紹介します。

Starr ranchワイナリーについては、このブログでも何回かご紹介させて頂ました。アメリカには、高品質のワインを少量だけ生産するワイナリーが数多く存在し、そうしたワイナリーで生産されるワインを「カルトワイン」とか「ブティックワイン」と呼びますが、Starr ranchワイナリーもそうしたワイナリーの1つです。南カリフォルニアで最近注目のワイン生産地である「パソロブレス」にあります。

このワイナリーの女性オーナー Judy Starrは、アメリカ東海岸のノースカロライナの生まれ。子供の頃から土いじりが好きで、将来は土と戯れる仕事がしたいと思っていたそうです。しかし、彼女はニューヨークのウォール街で、証券ウーマンとして活躍することになります。証券会社入社時の面接官に一目惚れするのですが、その面接官がのちのご主人となります。

彼女は、証券ウーマンとして大成功し、巨万の富を手にします。でも、人は成功してしまうと何か虚しさを感じるのでしょうか。彼女は、子供の頃からの夢であった「土と戯れる仕事がしたい。」という気持ちが抑えられなくなります。2002年に一念発起。パソロブレスにぶどう畑を購入してワイナリー経営を始めます。

証券ウーマンらしく、「いくら高品質のワインでも、1本数百ドル(数万円)もするのは、経営努力が足りないからだ。」という考えで、高品質なワインを手頃な値段で販売。ワイナリー経営でも成功を収めます。

数年前にご主人を亡くし、3人の息子たちも独立し、今はぶどう畑を見下ろす家に、1人で住んでいます。隣の家まで、数キロ離れた山の上に1人で住んでいるのです。

その上、従業員を雇っているとは言え、たった一人で、東京ドーム3個分のぶどう畑を切り盛りし、年間1,000本以上のワインを生産しています。すごいですよね!

アメリカの西部劇には強くて魅了的な女性が沢山登場します。Judyもそうした女性の1人です。

そんな強い女性であるJudyが、フラスコやビーカーが散在する彼女の実験室(?)で毎晩トライアルを繰り返し、作ったブレンドがこの「Marriage」という赤ワインです。「カベルネソーヴィニオン」という力強いぶどう品種と「メルロー」という比較的穏やかなぶどう品種をちょうど50%づつブレンドしています。

彼女は「カベルネソーヴィニオンは男。メルローは女。だからこのブレンドはMarriageなの。」と私に説明してくれました。彼女が作ったワインの中で最も気に入っているワインだとも。

ここから先は私の想像ですが、きっとJudyは、ご主人との楽しかった日々をこのワインで表現したかったのではないでしょうか。そして、この山の上の1軒で心が折れそうになった時、このワインを開けて、天国のご主人と会話をしているのではないでしょうか。そんな想像しながら飲むと、このワインの見事に調和の取れた味、女性らしい少し甘酸っぱい香りが、心にしみます。

昨年7月にJudyと会って、テイスティングルームで彼女の話を聞きながらこのワインを飲みました。あと数百本しか残っていないと言っていたので、もう売切れていることでしょう。

私も半ダースほど買ってきたのですが、友人とテイスティングしたり、友人にお譲りしたりしていたら、あっという間に最後の1本になってしまいました。その最後の1本も年末の友人宅でのホームパーティーで、みんなでワイワイ言いながら飲んでしまいました。

もうこの世にあの美味しいワインが存在しないと思うと少し寂しい感じもします。

Judyの話をすると「きっとご自分の人生と、Judyの人生を重ね合わせていらっしゃるのですね。」とおっしゃる方がいらっしゃいます。そうかもしれません。

今年も、素晴らしいワインに出会えます様に。そして、ワインを通じて素晴らしい人々に出会えます様に。そして、皆様にとって2018年が素晴らしい1年になります様に。